ARIA THE NATURAL_TV08
第8話「その ボッコロの日に…」
最近、大雨が降ったり暑かったりと、梅雨なのか夏なのかどうにも中途半端なお天気。水の都「ネオ・ヴェネツィア」には梅雨は存在するのかなぁ・・・。
「ネオ・ヴェネツィア」の風物詩、夏前の定例気候「アクアアルタ」。今年も床上浸水の季節がやって参りました。
「灯里ちゃん、それじゃあでかけてくるわね。・・・夕方には戻れると思うから」
去年と同様、ゴンドラ協会の会合に出かけてしまった「アリシア」。去年は買い物で時間を潰しましたが、今年はどうやって暇を潰しましょう・・・。
ジリリリリリ・・・
鳴り響く電話に「アクア社長」をおんぶしたまま受話器を持ち上げる「灯里」。電話の相手はお客様・・・ではなく「サラマンダー」の「暁」でした。
「俺様だ。長靴カンパで待っているから、超特急で来るように。・・・わかったな、もみ子よ」
デートの申し込みにしてはぶしつけな「暁」の言葉ですが、「灯里」はたいして気にした様子もなく「アクア社長」と一緒に「長靴カンパ」へ。
途中、街行く人達の胸元に飾られた1輪のバラに、「ボッコロの日」の存在を思い出す「灯里」。
「胸に紅いバラ・・・そうか、今日はボッコロの日なんだ。・・・あひっ」
と、そこへカゴにバラを背負った「暁」が姿を見せて「灯里」の髪の毛を引っ張ります。
「遅いぞ、もみ子よ」
髪の毛を引っ張らないで&「もみ子」じゃないと文句を言う「灯里」ですが、いつものように「暁」は気にも止めません。
「あ・・・凄いバラ・・・カゴ一杯ですね」
「うむ。・・・アリシアさんに渡そうと思ってな」
本日は年に一度の「ボッコロの日」。男性から愛する女性へと1輪のバラを贈る大切な日ですが、彼にとって「アリシア」への想いは1輪では表せないようです。
「俺様のアリシアさんへの崇高な想いが、たった1輪で足りるものか!・・・街中のバラを買い占めてこそ、無限の愛が示せるのだっ!」
※そ、それでは他のバラを買いたい人に迷惑では・・・。(^^;)。
体よく荷物持ちへされてしまった「灯里」。道行く途中の人達がバラをつけているのを微笑んでいると、後輩「アリス」の姿を発見。彼女の胸にも1輪のバラが咲き誇っています。
「はい。パン屋のおじさんに。・・・義理花ですけど」
なんとも現実的な彼女の言葉に、苦笑いを浮かべる「灯里」。彼女の話によると「アテナ」も会社の後輩達にたくさんのバラを貰っているそうで、義理花の文化はこの世界では当たり前のようです。
「アリスちゃんも、アテナさんにあげたの?」
「私は義理花はあげない主義です。・・・それに私があげたところで、1輪増えるだけで、アテナ先輩にとってはどうということないですよ」
義理花はあげない主義と話す「アリス」ですが、その言葉は「灯里」によって遮られます。
「・・・アリスちゃんに貰ったら嬉しいと思うけどな、アテナさん」
尊敬する先輩にバラをあげるのは素晴らしい行為。その1輪は「アテナ」にとって特別なバラになることは間違いありません。
---
「アテナ先輩、あげたら・・・喜ぶかな」
※可愛い後輩から貰うのですから「義理花」でも「アテナ」は大喜びしますよね。・・・それに、義理かどうかは「?」ですし。(^_^)。
冷たい石畳の感触を素足で味わうために、長靴を脱いで闊歩することにした「灯里」と「暁」。初夏の陽気が足下で癒され、歩くリズムも軽やかになります。
「うわぁ・・・水面に空が映って、綺麗・・・。洗濯物や、建物の格子窓まで。あっ、浮島も映っていますよ。・・・ふふふっ・・・鏡の国にいるみたいですね」
綺麗な景色に、つい口から出てしまう奇跡の言葉。いつもならここで突っ込みが入るところですが・・・。
「そこっ、恥ずかしいセリフ、禁止っ!」
丁度ピッタリ、計ったように姿を現した「藍華」。相性の悪い「暁」との口げんかも始まり、「灯里」の口からはため息ばかり。と、その視線が「藍華」の手元へと釘付けになります。
「あ、藍華ちゃん。藍華ちゃんも誰かからバラを貰ったんだ。・・・もしかして、アルくん?」
「ちょっ・・・えっ・・・な、なんでアルくん。ち、違うわよ。・・・これはね、アリシアさんにあげるの」
※どもる「藍華」萌え~っ。(^_^)。
「アリシア」の居所を「灯里」より聞いた「藍華」は、「先に渡すのは私よ」とダッシュでゴンドラ協会へ。ならばと「暁」はさらにバラの量を増やして勝負。旧友のよしみで「ウッディー」からお金を借りてバラを大量購入です。
「俺様の愛を表現するには、まだまだ足りんのだっ!」
※お金は借りたら返しましょう。ご利用は計画的に。(^^;)。
「ボッコロの日か・・・そういえば、ボッコロってどういう意味なんでしょうねぇ」
いかに安く多量のバラを購入するか、花屋さんと侃々諤々と交渉している「暁」を置いて、「アリア社長」とゆったりとした会話を楽しむ「灯里」。そこへ、ひとりの女性が「ボッコロ」の意味を語ってくれました。
「ボッコロは『花のつぼみ』という意味だよ。・・・よかったら、『ボッコロの日』の由来を話してあげようか」
老いも若きも、男性が1輪の紅いバラを贈るならわしがある「ボッコロの日」。この行事は何百年も前の「マンホーム」にあった実話から来ているそうです。
【『ボッコロの日』の由来】
高貴な娘に恋をした、ある下級貴族の若者。
彼は自分の誠意を娘の父親に見せようと、進んで戦争へと赴きました。
しかし、戦いは若者の肉体を傷つけ、
彼はその命を純白のバラの茂みに捧げることになります。
自らの命が尽きようとしたとき、若者は最後の力を振り絞り、
1輪のバラを手折って戦友へと託しました。
そして娘は、若者の血に紅く染まった白いバラを、届けられて、
愛する人の死を知ったのです。
※切なくなる由来ですね・・・。(T_T)。
「なんだかとっても摩訶不思議。もうその彼も彼女も、何百年も昔にいなくなっているのに・・・その彼の思いだけは紅いバラとなって、こうして今も残っているのですね・・・」
「マンホーム」より受け継がれた「ボッコロの日」。それこそ時間だけではなく、果てしない空間さえも越えて、その想いは惑星「アクア」に受け継がれています。今、「灯里」の胸の中に、愛に生きて戦いに死んだ若者の思いが、ゆっくりと広がっていきました。
「もみ子よ・・・。恥ずかしいセリフ禁止だ」 ※(^^;)。
---
残念ながら「アリシア」とは会えませんでしたが、ゴンドラ協会からの帰り道、「藍華」は彼女が心動かされている「ノーム」の「アル」にばったりと出会います。
「藍華さん!・・・アクアアルタの日は、藍華さんたちはお休みなんですね。それに今日は・・・ボッコロの日なんでしたね」
左手に持ったバラを見やって、「アル」が投げかけた言葉。その言葉に、彼女の心はドクン・・・と音を立てました。
「違うのっ・・・このバラは、アリシアさんにあげようと思って、私が自分で買ったバラなのよっ」
顔を赤らめ、慌てて(必要のない?)言い訳を「アル」に行う「藍華」。
しかし、彼女は「そうでしたか」と笑顔で返す「アル」の発言の後に、ふと小さくも重大な疑問に気がつきます。
『もし・・・誰かに貰ったって言ったら・・・アルくん、どんな顔をするかな・・・』
自分自身では答えが出るはずのない疑問に、しばし没頭する「藍華」。思考のループは「アル」が声をかけるまで続きました。
「・・・藍華さん?・・・藍華さんは、宝石とかに興味ありますか?」
「宝石・・・そりゃあ、まあね。でも、なんで急にそんなことを聞くの?」
まだドギマギしている心を隠すことも出来ず、少し慌てた言葉で聞き返す「藍華」。彼女に「アル」は手のひら大の石ころを差し出しました。
「よかったら、これをどうぞ。・・・『バラの瞳』と呼ばれる宝石の原石です。地下世界でたまに取れるんですよ」
「ボッコロの日」の1輪のバラではないけれど、同じ名を持つ宝石の原石をプレゼントされた「藍華」。どうやら彼女の頬は、冷める暇を与えて貰えないようです。
『・・・バラにひっかけて、宝石の原石だなんて。・・・もしかして・・・ひょっとしてこれって・・・』
※普段の「アル」からは望んでも聞くことが出来ない言葉の数々。これも「ボッコロの日」の小さな奇跡なのでしょうか。(^_^)。
「・・・アルくん、これいったいどういうつもりで・・・」
今日はもしかして運命の日? 「アル」の真意を「藍華」が問い尋ねようとしたとき、通りの向こうから「灯里」が声をかけてきました。そのタイミングの悪さに、思わず顔をしかめる「藍華」。彼女の思いにも気がつかず、「アル」は「灯里」と「暁」のふたりに気軽に声を掛けています。
「どうしたんですか、暁くん。凄い数のバラですね」
自分の目の前から離れ、「暁」の近くへと歩いていく「アル」。その背中を見つめながら「藍華」は再び思考のループへと入っていきます。
『アルくん・・・この貴石をくれた意味って・・・』
「うん・・・藍華ちゃん?」
ボーッとした「藍華」にちょっと不思議な「灯里」。どうしたのか尋ねようとしましたが、向こうから「暁」が呼ぶ声が聞こえます。
「藍華ちゃん、またね」
生返事の「藍華」に、再び近づいてきた「アル」もちょっと様子がおかしいことに気がつきます。
「藍華さん、熱があるんじゃ・・・顔が赤いですよ?」
「えっ、別に大丈夫だけど。・・・それよりさっきの・・・だから・・・その・・・・・・なんでもないわよ。それより、アリシアさんを探すのを手伝いなさいよ」
まだ不思議がる「アル」の手を握って、「藍華」はいつもの調子を装いつつ歩いて行くのでした。
※今日は「藍華」ファン大喜びではないでしょうか。ドギマギする彼女は可愛らしいですねぇ。(^_^)。
「よし、これで準備は万全だな。あとはバラを渡す予行練習をするだけだ。・・・もみ子、アリシアさん役を頼むぞ。・・・もし、アリシアさん!」
「あらあら・・・」
まるでコントのようなふたりの動き。それでもやっている本人、少なくとも「暁」は大まじめに練習に励みます。
「こ・・・これ・・・俺・・・俺・・・俺のきも・・・きも・・・気持ち・・・」
バラを摘んだゴンドラごと持ち上げて渡そうとする「暁」。その必死な表情はかえって相手に恐怖感を与えそうです。
「似ていない灯里でこれでは、本物にあったらどうなるか、想像も出来ん。・・・だからこそ、こうして練習を頼んでいるのだ。それではもう一度いくぞ」
かなり非道いことを言われつつも、たいして気にせずに練習に付き合う「灯里」。あれあれ、どうやら「アリア社長」が誰かを見つけたようですが・・・。
「もし、アリシアさん」
「はい?」
瞬時に凍り付く「暁」の表情。「灯里」の物まねとは明らかに違う、聞き間違えるはずもない美声が彼の脳天へと直撃します。
「・・・えっ・・・ちょっ・・・ぐはぁっ・・・」
ゴンドラ協会からの帰りに、たまたまふたりと出会った「アリシア」。彼女のゴンドラには、山のようにバラの花が積まれていました。
「うわぁっ・・・凄い数のバラですね」
「うふっ・・・仕事柄ね。お得意様やおつきあい先から、いっぱい頂いちゃったの」
※大枚はたいてかき集めた「暁」のバラの数よりも、ゴンドラに積まれたバラの数が多いです。さすが「三大妖精」。
「・・・暁さん」
今がチャンスと小声をかける「灯里」に、「お、おう」と頷く「暁」。一世一代の勝負が幕を開けました。
「あ、あの・・・アリシアさん。こ・・・こ・・・こ、これ・・・俺の・・・き・・・き・・・気持ち・・・」
彼の言葉を聞いているのかいないのか、はたまたわかってやっているのか。上から下まで「暁」を見やった「アリシア」は彼の言葉の続きを待たずに「灯里」へと話しかけます。
「あらあら灯里ちゃんこそ。暁くんからいっぱい貰ったのね。あらあら・・・うふっ・・・お邪魔しちゃったかしらね。じゃあ私、先に帰っているわ・・・」
その言葉に「ほへっ」と惚けた「灯里」を残して、悠々とゴンドラで去っていく「アリシア」。哀れ「暁」は追いかけようとしてゴンドラに躓き、背負ったバラごと水面に全て投げ出すこととなりました。
「アリシアさん、カムバアーック!・・・バァアアーック・・・」
がくりと膝をつく「暁」に、かける言葉も見つからない「灯里」。ふと目を上げると、水面に立った数百本のバラが、彼を中心にしてゆっくりと広がりを見せてゆきます。
「暁さん、見てください。・・・暁さんの想いが、水面いっぱいに広がっていきます。どこまでも・・・どこまでも広がっていきますよ。まるで、大昔の恋人達の想いが、人の心に映って広がっていくみたいに。・・・誰かが誰かを思う優しくて・・・どこか切ない気持ち。きっと誰の心にも、暖かな光をともして。・・・不思議と笑顔にさせてくれる。それはきっと紅いバラの伝説がくれた、魔法なのかも」
彼女の言葉をバックに、人々の笑顔が広がっていきます。頂いたカードの文面に微笑む「晃」、「アリス」の差し出したバラに笑顔を浮かべる「アテナ」、橋の上で足下を流れていくバラたちに笑顔を見せる「藍華」と「アル」・・・。
※人々に笑顔一杯を与えることが出来ましたし、無駄にならなかったのが唯一の救いですかね。頑張れ「暁」!
「うん、大丈夫です。きっとアリシアさんに伝わりますよ、暁さんの気持ち」
笑顔を見せる「灯里」に「何だその根拠のない自信は?」と軽口を叩く「暁」。しかし彼自身も、先ほどまでの悲嘆な表情から一変し、笑顔を浮かべる自分に気がついていました。
「もみ子、ほれ・・・やるよ。今日一日付き合わせた謝礼だ」
水面に浮かぶ一輪のバラを投げてよこす「暁」。その花を受け取った「灯里」は、今まで「暁」が見たこともないような笑顔を浮かべました。
「ありがとうございます。私・・・男の人からお花を貰ったの・・・初めてです」
ドクン・・・。その鼓動は「ボッコロの日」が与えたちょっと特別な想いか。今年の「アクアアルタ」は、ちょっと幸せな気分を「ネオ・ヴェネツィア」に与えたようです。
最後の「暁」の心臓音は、今後の「灯里」との関係に何か変化を与えるのでしょうか。憧れだった「アリシア」に抱いていた思いとはまた別の想い・・・というのはベタすぎですかね。とにもかくにも惑星「アクア」と水の都市「ネオ・ヴェネツィア」は、小さな奇跡で出来ているようです。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ARIAいいよね!癒されるよあれ。
つっても二期から見始めたんですがw
コミックも買おうかなと考え中・・
投稿: オイカワ | 2006.05.23 20:21
初めまして。一応管理人のジャンと申します。
私も原作コミックは読んだことがないのですが、
アニメのできが良いので惹かれるものはありますね。
今回のシリーズが終わったら、とりあえずマンガ喫茶でチェックしようかな。
投稿: ジャン | 2006.05.24 00:30