ツバサ・クロニクル_TV33
第33話「阿修羅のイワレ」
お久しぶりのブログ再開でございます。
前回の「ツバサ・クロニクル」第32話「魔術師とデート」は「ファイ」と「チィ」のハートフルなお話だったわけですが、今回は何か殺伐としたタイトル。さてどうなりますか・・・。
雨の街・・・右目を包帯で覆い、街をさまようひとりの少年。足下を滑らせて転んだ少年は、起き上がる際に街角の鏡に目をやります。そこに映った自身の姿をしばし見やり、少年は唖然として言葉をつぶやきます。
「誰・・・」
---
それは「小狼」の悪夢でした。うなされて起き上がった「小狼」に「サクラ」が大丈夫かと声をかけると、彼は包帯に覆われていた右目へと手をあてがいます。
「昔の夢を・・・見ていたんです」
不安そうに見つめる「サクラ」に笑顔を作ってみせる「小狼」。しかし、彼の心は今だ悪夢の・・・過去の事実に囚われていました。
『たとえ・・・あの日以前の記憶が無くても、俺は確かに小狼なのだから・・・』
※考古学者の父「藤隆」と出会う前の「小狼」の姿ですね。本シリーズで語られるかは不明ですが、物語の根幹に関わってきそうです。この頃から右目は見えなかったということを示してもいるのでしょうね。
「・・・新しい国に来たのですね。黒鋼さんとファイさんは?」
この言葉に「同じ場所に落ちなかったみたい」と返す「モコナ」。どうやら同じ世界にはいるようですが、実体化するポイントがずれてしまったようです。そしてさらに詳しい説明を「小狼」が聞こうとしたとき・・・。
「きゃぁああぁあぁああぁっ!!」
部屋へと飛び込んでくる、美女、美女、美女の群れ!
驚く「小狼」の周りを取り囲んだ美女達は「目を覚まさないから心配していたのよ」と彼を抱きしめたり、「サクラ」や「モコナ」にもなでなでしたり。
「ちょいとお待ちっ!」
事態に翻弄される「小狼」の危機を救ったのは、ちょいと鯔背(いなせ)な少女でした。
「もうすぐ仕事だっていうのに、こんなところで何油売っているんだい、姉さん達!・・・相手は子供とはいえ、ここは男子禁制だよっ」
「鈴蘭一座」のオーナーである「鈴蘭」の言葉に、事情を説明する従業員の女性一同。話を聞いた「鈴蘭」は、旅の途中行き倒れた少年を見捨てては女がすたると、「小狼」達の面倒を見ることをここに宣言します。
※あそこまで驚き慌てふためく「小狼」の姿は、なかなか見ることが出来ませんね。(^^;)。
「なかなか見つからないね、小狼くんたち。・・・こうして言葉が通じるということは、モコナからさほど離れていないとは思うんだけれど・・・」
一方、はぐれてしまった「ファイ」と「黒鋼」は徒歩にて「小狼」達の行方を捜している最中でした。
「黒ぽん、気づいている?」
ふと足を止める「ファイ」の言葉に「ああ」と頷く「黒鋼」。その直後、周囲の藪から何人もの男達が彼らふたりに襲いかかってきますが、「黒鋼」の敵ではありません。
「峰打ちだ。手前らみたいな素人は、斬る価値もない」
さらに周囲を取り囲む男達は、仲間が倒されたこともあり戦意むき出し。そこへ階段上からひとりの男性が割って入ります。
「お止めなさい」
メガネをかけた青年の言葉に、武器を収める一同。どうやら彼がこの一同の頭領のようですが・・・。
---
大きなお屋敷へと案内される「黒鋼」と「ファイ」。館の主人である「蒼石」は、先ほどの行動に対して正式に謝罪の言葉を述べます。
「先ほどは、うちの若い者達が失礼いたしました。・・・人捜しですか。あちらも居場所を探していらっしゃるでしょうね・・・。宜しかったらここにお泊まりになりませんか?・・・困っている方の力になるのも私の務めですから」
※何か日本の時代劇っぽいですね。対立するふたつの集団に、それぞれ用心棒として雇われる「小狼」と「黒鋼」・・・みたいな流れだったりして。
夜。派手な花火が打ち上げられ、「鈴蘭一座」の公演が巨大なテント内にて開催されます。
「この鈴蘭一座は、まるでサーカスですね」
袖から華やかな舞台を見守る「小狼」と「サクラ」。彼に「サーカス」の説明を聞いた「サクラ」は「クロウ国」にも同じような一座が来たことがあると「小狼」に話して聞かせます。その言葉に、昔を思い出す「小狼」。小さい頃、訪れたサーカスの舞台を見て「サクラ」は自分も綱渡りを試してみると「小狼」を困らせたものでした・・・。
「小狼くんたちが羽を取り戻してくれたから・・・。ありがとう」
徐々に蘇ってきた昔の記憶の礼を言う「サクラ」の言葉に「お礼なんて」と返す「小狼」。その表情は、どこか寂しげにも映りました。
※何かを手に入れるには同等の代価が必要となる(鋼の錬金術師のようだ。(^^;))。納得して結んだ契約ではありますが、「小狼」にはとっては辛い現実です。
「綺麗だろう?・・・あたしたちはこの『紗羅ノ国』中を旅しながら、こうして芸を見せているんだよ」
「鈴蘭」の言葉に、あらためて滞在を許可いただいた礼を言う「小狼」。彼女は気にしないでと彼に返して、さらに言葉を続けます。
「私たちは1年に1度、月が綺麗な今頃の時期になると、ここに帰ってくるんだ。どこで興行しても楽しいことに変わりはないけれど、やっぱり自分たちの家があるこの場所は特別なんだ。それに、ここには・・・」
言葉を詰まらせる「鈴蘭」を不思議そうに見やる「小狼」。その横で「サクラ」は、袖に飛び込んできた炎のかけらに手を伸ばそうとします。
「・・・うちの炎は触っても火傷なんかしないの。守り神様が授けてくださる『炎』だもの」
「守り神・・・」
---
食事時。「黒鋼」と「ファイ」も「蒼石」の相伴に預かり、縁側で夕飯を頂いていました。ふと庭にある社へと目を向ける「ファイ」。彼の魔力に、社から何かを保護する力が感じ取れると、「ファイ」は「蒼石」に話します。
「さきほどの剣術といい、あなたの見立てといい・・・ただの旅のお方ではないようですね」
社の中へと案内される「ファイ」と「黒鋼」。その中には巨大な神の像が鎮座していました。
「これが『夜叉ノ像』。・・・血の涙?」
「ファイ」の言葉通り、見上げた「夜叉ノ像」からは、確かに血のような涙がこぼれていました。そのことについて説明を加える「蒼石」。
「月が美しいこの季節になると『夜叉ノ像』は傷ついた右目から血を流すのです。・・・ある旅の一座が祀っているもうひとつの像が、この出来事に関係していると言います」
---
そしてその頃、「鈴蘭」もまた「小狼」と「サクラ」を守り神様の元へと案内していました。
「これが一座の守り神、その名も『阿修羅様』さ」
美しい女性をかたどった像を前に、ため息を漏らす「サクラ」。そして考古学者の血が騒ぐ「小狼」(笑 。
「よほどの名工が造った像なんでしょうねぇ。どのくらい前に造られたんだろう?・・・何で出来ているのかなぁ・・・どんないわれがあって・・・」
はっと気がつく「小狼」に微笑む「サクラ」達。しかしこの像の美しさの前には仕方がないと「モコナ」が彼を弁護します。
「私も好きです。とても綺麗だし」
「サクラ」の言葉に、「ありがとよ」と微笑む「鈴蘭」。しかし、彼女の表情はすぐに険しいものへと変化してしまいます。
「でも・・・あいつらはそう思っちゃいない」
---
「『阿修羅』は戦いと災いを呼ぶ神とされています。そして、ここに祀られている『夜叉』は夜と黄泉を司る神なのです。・・・『夜叉ノ像』の流す血の涙は『阿修羅』が呼ぶ戦いと災いに対する警告だと伝えられています」
その言葉を聞いても、「夜叉ノ像」が血の涙を流す理由が本当に「警告」なのかといぶかしむ「ファイ」。
一方、「蒼石」達との軋轢を聞かされた「サクラ」は哀しい表情を浮かべていました。
「こんな美しい神様が、戦いと災いを呼ぶなんて信じられない」
「俺も・・・そう思います」
※「鈴蘭一座」が祀る「阿修羅」と「蒼石」達が祀る「夜叉」。人の思惑はどうあれ、両神の間には何らかの繋がりはありそうですね。
「今日は休演日だ。そこで、客人として迎えた小狼とサクラの歓迎会といこうじゃないか。さあ、ふたりとも出ておいで」
なかなか顔を見せない「小狼」を引っ張り込む「鈴蘭」。その姿を見た一座のものたちは黄色い声を奏でます。
「・・・前にも言ったが、ここは男子禁制。客以外に男が出入りしていると御上に知られたら一大事だからね。悪いが、その格好で通して貰うよ」
三つ編みのウィッグをつけられ、女性の格好をさせられた「小狼」。恥ずかしそうに下を向く彼を楽しむ「鈴蘭」達ですが、そこに悪い知らせが舞い込みます。
「大変です、オーナー!・・・表にあいつらがっ」
---
「鈴蘭一座」の玄関先へと押しかけた「蒼石」の若い衆達。手に武器を携えた彼らは「今日こそは出て行って貰う」と一座のものたちを脅しにかかります。
「おやまぁ・・・何を言い出すかと思えば、無体なことを」
相手をしない「火煉太夫」に言葉を荒げる若い衆達。やはり揉め事の原因は「夜叉ノ像」が流した血の涙のようです。
「昨日の晩、『夜叉ノ像』がまた血の涙を流した」
「それがうちの『阿修羅様』のせいだと?」
力ずくでも追い出そうとする若い衆達の行動に、怒って蹴り返したのは「鈴蘭」。身内のものには髪の毛一本触らせないという啖呵に、一座の意気は上がります。
「でかい口を叩きやがって・・・蒼石様もなんで・・・」
その男の名前に、はっと表情を変える「鈴蘭」。もっとも若い衆は気づくこともなく、一同で殴りにかかります。
「やっちまえっ!!」
多勢に無勢、また意識をそがれた「鈴蘭」に襲いかかる数の暴力達。その危機を救ったのは、謎の美少女「小狼」でした (笑。
慣れない格好にもかかわらず、その秀逸な蹴り技を見せつけられた「蒼石」の若い衆達。「憶えていろ」との捨て台詞だけを残して、哀れ退散とあいなります。
※おやおや「鈴蘭」と「蒼石」はちょっとただならぬ関係なのでしょうか?・・・ますます時代劇っぽく。(^^;)。
縁側にてひとり考え込む「黒鋼」。「小狼」達を探しに行こうと声をかける「ファイ」にも、「ああ」と頷くものの腰取りは重い様子。
「ニホン国だっけ、黒様の居た世界。この間は知世ちゃんに会ったし、ここは黒ぽんの居た世界に似ているようだし・・・もしかして黒るん、故郷を思い出して黄昏れちゃったりしている?」
その目的が「元の世界に帰る」ことを知ってからかう「ファイ」に「うるせえ」と声を返す「黒鋼」。「冷たいなぁ・・・仲間なのに」と言葉を口にする「ファイ」に、「黒鋼」は半ばあきれ口調で言葉を返します。
「よく言うぜ。お前も腹割るつもりはねえくせに」
「・・・そうでもないかもしれないよ」
背中を向けて真意を探らせようとしない「ファイ」の言葉に、昨日の出来事を告げる「黒鋼」。確かに彼が世界を逃げるキーワードが、昨日の出来事には含まれていました。
「昨日、蒼石とやらの話の中に『阿修羅』の名が出た。その時顔色を変えたのはなんでだ?」
その言葉に「ファイ」が答えることもなく、ふたりの会話は「蒼石」が部下を叱責する言葉によって遮られます。
※「アシュラ王」から逃げているというのは「小狼」達には伝えていないんでしたっけ。
「何ということをしたのです」
普段、落ち着いた様子を見せる「蒼石」にしてはきつい口調を受け、頭を下げる若い衆達。
「・・・いかなる理由があろうとも、あの一座に手を出してはなりません。・・・一座の方達に怪我はありませんでしたか?」
「蒼石」の言葉に「逆にこちらが足蹴りを使う少女にやられました」と報告する若い衆達。その言葉に、一瞬「小狼」を思い浮かべる「黒鋼」達でしたが、相手が少女と聞いて肩を落とします。
「あ、もしかして!・・・小狼くんが女の子の格好をしていたりして」
「あるわけねえだろうっ!」
※あるんだなぁ・・・それが。(^_^)。
その卓越した体術に、公演に参加してみないかと誘われた「小狼」。さっそく女の子の格好のままで練習に参加すると、器用にこなして見せます。
「上手いじゃないか小狼。これなら明日の興行に出せそうだね。・・・サクラもやる気満々だよ」
その言葉に驚いて辺りを見渡す「小狼」。するとそこには綱渡りを練習中の「サクラ」の姿が。
「姫ぇ!」
※今回は「小狼」のギャグ顔が冴えています。(^_^)。
夜、「ファイ」と「黒鋼」を探しに出かけると「サクラ」に報告する「小狼」。「だったら私も行く」という彼女を連れて、深夜の街角をふたり歩きます。
「鈴蘭さん・・・あのときとっても寂しそうだったの」
昼間の「蒼石」の若い衆達との諍いの際、その哀しげな表情を目撃していた「サクラ」。その言葉を聞いた「小狼」ですが、今はまだ思い当たることがありません。
その時、小道へと駆け抜けるひとりの青年の姿を目撃したふたり。もしかしてまた若い衆達かと、見つからないように青年の後を追いかけました。
---
「ここだよ」
木陰から「鈴蘭」の声が聞こえ「蒼石」はその足を止めました。お互いに月明かりの下で笑顔を見せ「蒼石」の元へと駆け寄る「鈴蘭」。
ふたりは愛しい互いを確認しあうかのように、ひっしと抱き合います。
「会いたかったよ・・・蒼石様」
「私もです。この一年・・・ずっと今夜を待っていました。さあ、もっとよく顔を見せてください」
旅を続ける「鈴蘭一座」のオーナーとして全国を駆けめぐる「鈴蘭」。こうしてふたりが相まみえるのは、おおよそ一年ぶりになります。
「昨日のことを・・・謝りに来ました」
「毎年のことさ、もう慣れっこだよ。・・・うちの『阿修羅様』とそっちの『夜叉』さんは決して分かり合うことのない神様だもの。・・・それなのに、どうしてあんたなんかに惚れちまったんだろう」
「実らないとわかっていても、人は誰かを愛します。・・・それが、人というものです」
まさか「小狼」達に目撃されているとも知らず、しっかりと抱き合うふたり。現在のふたりの距離を埋めるかのように、今この時だけはとお互いがお互いを慈しみます。
「『阿修羅』と『夜叉』が対立するこの世では、私たちは結ばれることはありません」
「わかっているよ、そんなこと。だから今だけ・・・せめて今だけは私を離さないで」
※「ロミオとジュリエット」など対立する組織同士の若者が愛し合うことは、決して珍しくはありません。ふたりの間にそびえる巨大な壁が、より愛を盛り上がらせるのでしょうか・・・。
「あのふたり可哀想。・・・小狼くん、『阿修羅様』にお願いしようよ。どうかふたりが幸せになりますようにって」
その言葉に「わかりました」と大きく頷く「小狼」。ふたりは「阿修羅様」が祀られる社へと、その足を運びます。
しかしそのとき、ふたつの神の像に大きな異変が起きようとしていました。地震のように辺りを揺るがす地響き、その震動は「黒鋼」達や「鈴蘭」達、そして「モコナ」にも伝わります。
「めきょっ!」
---
「この揺れは・・・『阿修羅』と『夜叉』が互いを呼び合っている。・・・『阿修羅堂』へ急いでください。私も戻ります」
「蒼石」に促されて「鈴蘭」が足を進めようとした頃、「阿修羅堂」のそばに来ていた「サクラ」の身体を、眩いピンクの光が包み込んでいました。
「姫っ!」
無意識のうちか、右手をゆっくりと「阿修羅堂」の扉へと向ける「サクラ」。すると扉は音を立てて開き、奥の「阿修羅」は金色の光に包まれた姿をさらします。
---
同時刻。一方の「夜叉」もまた、蒼い光に包まれた姿を「黒鋼」と「ファイ」に見せていました。
「黒様っ・・・空が・・・」
「空が・・・割れる!?」
---
光を失い、倒れ込んだ「サクラ」。彼女を心配して駆け寄る「小狼」。
そして空には大きな裂け目が広がり、「鈴蘭一座」の者達も、「蒼石」の若い衆達も、「黒鋼」や「ファイ」達も皆、空を眺め見るのでした。
今回登場した『阿修羅様』は女性神の像でしたので、「ファイ」が逃げる「アシュラ王」とはまた違うようですね(今のところ、魂が同じ場合、性別の逆転はないようですし)。
さて、実際の伝説としては「阿修羅:インド神話では戦いを好む悪神(仏法では別)」、「夜叉:人を害するインド神話の悪鬼」なのですが、本世界ではなにやら男女の関係だった様子。それが次回のキーとなりそうです。
それから、今回は「小狼」の過去話が冒頭にインサートされましたね。そろそろ「飛王」の場所にいる「小狼」らしい少年も登場するのかな?
最近、1話完結の(恐らくは)「オリジナル話」が中心だった「ツバサ・クロニクル」ですが、こうした複数話にまたがる物語も、また良いものです。私としては、大きな流れがあって、小さな話の端々に伏線があってひとつにまとまっていく物語が大好きなのですが、「ツバサ・クロニクル」の世界がどう紡ぎ出されていくのか。これからの展開が非常に楽しみになりました。(^_^)。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント