おおきく振りかぶって #07
#07「野球したい」
打たれた自分が怒られるとベンチにも入れずに膝を抱えていた「三橋」。しかし、「阿部」が彼にかけた声は意外なものでした。
「ごめん・・・俺が自分の欲でアウトを焦った。三塁打もホームランも・・・俺の責任だよ。・・・お前は良く投げたよ。顔を上げろ」
彼の欲、それも全て「三星学園」に未だに未練を持つ「三橋」の気持ちを断ち切るため。「阿部」の言葉に「三橋」はあらためて自分の心へと向かい合います。『僕は、自分の理想となった今の三星学園に戻りたいのか・・・』と。
・・・
「1番、2番、3番、よーく聞いて。4番の田島くんを敬遠させないためにはどうしたら良いと思う?」
監督「百枝」の言葉に「塁を埋める」と答える3人。そしてそのためにピッチャー「叶」を責めると「百枝」は続けます。
耐久作戦、そしてそれを見越してのコンパクトなバッティング。待望の満塁というチャンスを作りだした「西浦高校」の4番に立つのは、もちろん天才打者「田島」。
「・・・畠。次のフォークは指を深く握るぞ。いいな」
円陣を組んだ「三星学園」で「叶」は本気を出したフォークの投球を「畠」に告げます。おぼつかない捕球のためにあえて浅く握っていたフォークの球筋。それを憶えている「田島」に通用するのは、本気のフォークしかありません。
「お、おうっ! 身体を張って、止めてみせる」
投げられた初球。憶えていた軌道通りのスイングはあえなく空を切り、「田島」のバットは空を切ります。途端に集中力を増す「田島」。続いて投球されたフォークを彼はまたも空振りしますが、それは本気のフォークの球筋を見切るためでした。
そして運命の三球目。本気のフォークへと絞り、スイングを始めた「田島」のバットへ予想外のチェンジアップが投げられます。止められないスイング。祈りを込めた「西浦高校野球部」の見守る中、彼のバットは・・・。
只の練習試合。試合の申し込みを受けた「三星学園」はそう思ったことでしょう。もしかすると、申し込んだ「西浦高校」でさえも、そう考えた人は何人か居たかもしれません。しかし、試合を経験した選手達。作戦を授ける両校の監督にとって、これはもはや「只の練習試合」では無くなりました。
試合の勝敗や、スコアブックを見るだけでは、たいした試合には思えないかもしれません。両校とも安打を打ち、フォアボールやデッドボールを与え、タイムリー、ホームランやスクイズで点を取り合う。「阿部」の言葉ではありませんが「パーフェクトも・・・ノーヒットノーランも・・・完封さえも無くなった」試合。
それでも、得るものの大きさは公式戦と同様・・・もしかしたらより大きな試合だったのではないでしょうか。
私たちは間違いなく、素晴らしい試合を鑑賞することが出来たのですから。
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