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機動戦士ガンダム00 #12

#12「教義の果てに」

 -アザディスタン王国 寺院-
 エネルギー不足に苦しみ、漆黒の闇が訪れる王国内。
 その一角、人目を避けるかのように市街地から離れた場所に、焚き付けた炎が光を生み出していた。
 そこでは「保守派」と呼ばれる「マスード・ラフマディ(ラサ)」を中心とする人達が、「マリナ・イスマイール」を中心とした現政権「改革派」への非難の声を強めていた。
 異教徒達を国に迎え入れ続ければ、いずれ「アザディスタン王国」は滅びる。あの「クルジス共和国」のように・・・。
 声を荒げる人々の中で、静かに「ラサ」は告げる。それは周囲の喧噪の中にも響き渡る、しっかりと落ち着いた声であった。
 「教えに背いた王女と議会には、いずれ神罰が下されよう。我らは神の報いを待てば良い」
 いつもなら収まる人々の喧噪が、今夜はいつになく熱い。神が罰を下さないのであれば、我々自身が下そうではないか。
 暴走しかける人々を、抑える側に廻る「ラサ」。その耳に、数発の銃声音が響き渡った。 
 「・・・何者だ。この場を何処と考えておるっ!」
 その声に「ラサ」当人と確認した賊は、ニヤリと口の端を歪めた。

 -アザディスタン王国 王宮-
 「マスード・ラフマディが何者かに拉致されたですって!・・・まさかそんなことが」
 その一報が告げられたとき、「マリナ」の動揺は「シーリン・バフティヤール」の予想を超えていた。
 「議会は既に、治安部隊の出動を決定させたわ。超保守派が過激な行動に出るのは時間の問題。そして万が一・・・マスード・ラフマディが死亡しているとなると・・・考えなさい。最悪の事態を回避するためにも
 まだ王女になりきれていないのか、それとも器ではないのか。「シーリン」は前者であることを祈りつつ、自らの仕事へと戻っていた。
・・・
 「ラサ・・・マスード・ラフマディ」
 王女は、自分が即位を決意し「ラサ」へと報告したときのことを思い出していた。
 あの時、彼は喜んでくれた。しかし・・・
 「ならば、私は反対の立場を取らせて貰おう。・・・よくお聞きなさい、マリナ姫。国が新しく生まれ変わろうとも、この土地で暮らす民には歴史があり、家族があり、神の教えがある。変化を嫌う者も多い。私もそのひとりだ。・・・あなた方に反対する者が争いを起こさないためにも、彼等の思いを受け止める者が必要だ
 自分は間違っていたのか。苦悩する「マリナ」の元に、「シーリン」から新たな連絡が入る。議会は機能を停止し、改革派は「ユニオン」から打診された軍資支援を受諾する道を選択したと。
 彼女は再び、心の底から神へと祈った。

 -太平洋上空-
 「しかしアザディスタンへ出兵とは」
 「フラッグファイター」メンバーからの通信に笑顔を浮かべる「グラハム・エーカー」。彼等「対ガンダム調査隊」は、大手を振って「アザディスタン王国」へと出兵する。そして、恐らくは内戦に干渉するであろう「ソレスタルビーイング」ともやりあうことになる。それは彼自身、まさに望むことであった。

 -アザディスタン王国 砂漠地帯-
 「内戦が始まるまで、おふたりは機内でお待ちください」
 差し出されたコーヒーへと手を伸ばす「ロックオン・ストラトス」。一方、関心がないのかカップを見もしない「刹那・F・セイエイ」。
 「アザディスタンの内紛を沈めるには、誘拐されたマスード・ラフマディ氏を保護し、全国民に無事を知らせる必要があります」
 ふたりへ事の次第を報告する「王 留美」。彼女の言葉に「紅龍」が跡を継ぐ。
 「とはいえ、この国の人達は異文化を嫌います。どれだけの成果を出せるか・・・」
 異文化、異教徒、異国民。改革派と二分しているとはいえ、保守派の力も強い「アザディスタン王国」で「王 留美」達「シークレットエージェント」の動きは制限されてしまう。
 「俺も動こう。・・・俺はアザディスタン出身だ」
 そこまで事態を静観していた「刹那」は、そう告げると席から立ち上がった。
暴走を牽制する「ロックオン」の言葉は、果たして耳に入っているのか・・・。
 『この国に、紛争を仕掛ける者達が居る』
 彼の脳裏には、少年兵時代の想い出が浮かび上がる。いや、想い出ではなく思い出したくもない「記憶」が。
 『あんな事を、まだ続けるつもりなのか・・・』

 本物語の主役(のはず、だよなぁ・・・)「刹那・F・セイエイ」編となった今回。
 今までの放送で彼の迂闊さは十分に取り上げられていましたが(<おい)、今回は地元での過去話&アクション編(?)です。
 とはいえ、「グラハム・エーカー」や「アリー・アル・サーシェス」と決着がつくとは思えませんので、トラウマに抗いつつも、小さな壁を乗り越える彼の人間的成長が見せ場と見ましたが、如何に・・・って、来週は年末と言うことでお休みなのですね。
 果たして2008年01月05日(土)まで今回の内容を憶えておくことが出来るであろうか・・・。(^^;)。

 さて、次回へと続く「刹那」の話は置いておいて、今回だけの話で印象に残った点を上げますと下記でしょうか。
 ・アレハンドロ・コーナーの真意
  国連大使・・・というよりは「ソレスタルビーイング」活動をしているようです。
  一方で、「ソレスタルビーイング」を見極めたいとも発言中。
  部下の「アムロ・レイ」もとい「リボンズ・アルマーク」ともに気になる存在です。
 ・ルイス・ハレヴィと沙慈・クロスロード
  本編に絡んでないようなので意図的に外していますが、結構このカップル(とルイスの母親)は気になっています。
  「ユニオン」「人革連」「AEU」という3大勢力から距離を置いているというか、仲間はずれになっている「経済特区・日本」(一応「ユニオン」所属?)
  さらに本編からずれているようなふたり。その割に出演していますが、どのように本編に入ってくるのか。
  単に傍観者として「ソレスタルビーイング」を見ているところに意味があるのかなぁ。

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機動戦士ガンダム00 #11

#11「アレルヤ」

-ユニオン 対ガンダム調査隊-
 「モビルスーツの性能差が、勝敗を別つ絶対条件ではないさ」
 天空での激戦。「ソレスタルビーイング」と「人革連」の戦いを聞いてなお、部下である「フラッグファイター」メンバーへと笑いかける「グラハム・エーカー」。その目には、一種の自信のような決意さえ伺える。
 一方、彼の同僚であり、信頼できる技術者でもある「ビリー・カタギリ」、そして恩師でもある「レイフ・エイフマン」は、「GN粒子」の正体を解析しつつあった。
 「やはりこの特殊粒子は、多様変位性フォトンでしたか
 「それだけではないぞ。ガンダムは特殊粒子そのものを機関部で作りだしておる・・・でなければ、あの航続距離と作戦行動時間の長さが説明できん」
 世界各国にある「ソレスタルビーイング」、そして「ガンダム」への包囲網は、確実に狭みつつあった。

-ソレスタルビーイング 戦闘母艦プトレマイオス-
 激戦を経てなお、致命的な傷を受けることなく浮かび続ける「プトレマイオス」。
 しかし艦内では先の作戦行動に対して「ティエリア・アーデ」から「スメラギ・李・ノリエガ」へ、まるで査問のような意見が投げかけられていた。
 「今回の人革連による軍事作戦。キュリオスを鹵獲寸前まで追い込まれ、ナドレの姿を敵に露呈してしまった。スメラギ・李・ノリエガ・・・全ては作戦の指揮者である、あなたの責任です
 敵に対しては武器を用い、味方に対しては冷酷さを持ってあたる。そう噂される彼の糾弾に対して、慣れたものなのか態度を余り変えることなく回答する「スメラギ」。それは、至極当然の言葉だった。
 「ごめんね。でもね、私も人間なの。時には失敗もあるわよ」
 回答に不満を持ち、なおも追及の手をゆるめようとしない「ティエリア」に対して、「お前にも責任はある」と仲裁に入る「ロックオン・ストラトス」。しばしの沈黙の後、「ティエリア」はひと言を残し去っていった。
 「今後は(マザーコンピューター)ヴェーダからの作戦指示を優先する」と。

-人革連 低軌道ステーション-
 一方、作戦行動の失敗を誰よりも痛感し、処分を覚悟している「セルゲイ・スミルノフ」。
 彼の報告を受けた上層部は、得た利益よりも支払った代償が大きすぎると語った。
 「鹵獲中に収集した羽根付きガンダムのデータ。ティエレンのミッションレコードに残されていた、ソレスタルビーイングの移動母艦と、デカブツが外部装甲を外した映像。・・・数十万機の探査装置と、20機以上のティエレンを失った代償にしては少なすぎる・・・が、君を外すつもりはない。辞表も受け付けない。・・・確かに今回の作戦は失敗した。だが、君に対する評価は変わってはおらんよ。ガンダムの性能が、我々の予想を超えていたのだ。・・・主席は極秘裏にユニオンとの接触を図っておられる。ソレスタルビーイングへの対応が、次の段階に入ったということだ
 このまま鹵獲作戦が継続されるのかと懸念していた「セルゲイ」ではあったが、上層部は明確にそれを否定した。
 今後は国家間を越えた協調作戦が取られるのか・・・皮肉なものだと、彼の脳裏には一瞬浮かんだ。

-ソレスタルビーイング 戦闘母艦プトレマイオス-
 『どうする・・・この事実を報告するか、それとも・・・』
 対峙した「ソーマ・ピーリス」が超兵特務機関出身だと確信した「アレルヤ・ハプティズム」は、戦争を幇助する行為だとして同機関殲滅の進言を考えていた。
 『あの忌々しい機関が存続していて、俺らのような存在が次々と生み出されていく。お優しいアレルヤ様には、同類への攻撃などできない相談か?なら身体を俺に渡せよ。速攻で片付けてやるからさ・・・あの時みたいに
 もう一人の彼、「ハレルヤ」が語りかける、思い出させる、あの夜のことを。かつて少年だった頃に起こった惨劇を・・・。
 「止めてくれ、ハレルヤ! 何も殺すことはない、彼等を保護することだって・・・。僕がここに来たのは・・・
 彼は結局、「スメラギ」へと作戦を進言する。
 その決意が是だったのか、非だったのか。答えは、彼自身も持ち合わせてはいない。

 過去への決別、その1歩を踏み出した「アレルヤ・ハプティズム」。彼が背負う十字架は、果たして少なくなったのか、それとも多くなったのか。すぐには結論が出ない問題ではありますが、私的には少なくなったのではと考えます。
 さて、今回の作戦により「ソーマ」のような超兵は作られなくなるのでしょうか。それとも(言い訳がましく技術者が語っていたように)他国が同じような行為に手を染めており、今後も作られていくのでしょうか。こちらの答えには、残念ですが後者であると私は考えます。

 世間を賑わしているスポーツ選手のドーピング問題。選手生命に影響する、もっといえば確実に寿命を縮めるであろう行為に人々が手を染めてしまう悲しさを、我々人類は抱えています。
 「あと1センチ遠くまで飛べれば、代表選手になれる」
 「あと0.1秒速く走ることができれば、歴史に名前を残せる」

 その時、目の前に、あるいは手を伸ばせば届く距離に「薬物」があったとき、手に取らない人の方が少ないのではないでしょうか。
 ドーピング問題と「ソーマ」達のようなデザイナーベビーを比べるのは、(自分で選択可能か否かという意味で)間違っているかもしれませんが、今回の「機動戦士ガンダム00」を視聴して、そんな感想を抱きました。

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機動戦士ガンダム00 #10

#10「ガンダム鹵獲作戦」

 A.D.2307年。永続的なエネルギーを手に入れた今でも、人類は争いを止めることが出来なかった。
 そんな世界に対して、戦争根絶を目的とする私設武装組織「ソレスタルビーイング」が行動を開始する。
 だが、それに反発する世界は「人類革新連盟軍特務部隊 超武」による特秘作戦を敢行。
 司令官「セルゲイ・スミルノフ」の戦術に4機のガンダムは翻弄され、反撃の糸口を掴めずにいた。
 その戦火の中「アレルヤ・ハプティズム」の前に「ティエレン・タオ・ツー」を操る超兵1号「ソーマ・ピーリッシュ」が現れる。
 ふたりの出会いは、宇宙に何をもたらすのか・・・。

 「敵の目的は私達じゃない・・・ガンダムを鹵獲するつもりだわ」
 戦闘母艦プトレマイオスの戦術予報士「スメラギ・李・ノリエガ」が自分の作戦ミスに嫌悪する中、彼女の言葉通り1機のガンダムが鹵獲の危機にあった。「ソーマ」に感応し、精神へダメージを負った「アレルヤ」の操縦する「ガンダム キュリオス」である。
 「機体の変調か、それとも罠か!?」
 中途半端な飛行形態を解かない「キュリオス」に不信を憶えつつも、好機を逃がすことはしない「セルゲイ」の指示によりガンダムの機体へとカーボンネットがかけられていく。持てる力を十分に発揮しないまま「ソーマ」によって捕獲される「アレルヤ」。
 接触通信によって得られた彼の言葉は、叫びだった。

 「うわああぁあっ! があぁっ!ぅあぁぁあっ!!」
 その声から以前、重力ブロックで彼等を助けたパイロットと認識する「セルゲイ」。
 「だが、なぜ苦しむ?ピーリッシュ少尉を拒んでいるのか・・・もしや・・・少尉と同類!?」
 外部からの信号による影響。以前「ソーマ」が苦しんだ際の説明を彼は思い出していた。同調するのは彼女と同じく遺伝子操作を受けた人間だからか・・・と。

-人革連 多目的輸送艦 ラオホゥ 4番艦-
 ついに気絶してしまう「アレルヤ」。機体ごと輸送艦へ運ばれる彼の姿に、ひとりの「ガンダムマイスター」が気がつく。
 お前もまた「ガンダムマイスター」足る資格が無いのか・・・と。
 「敵輸送艦からキュリオスの反応・・・敵に鹵獲された!? 何という失態かっ、万死に値する!」
 他のガンダムとは比較にならない厚い装甲、GNシールドによる絶対的な防御機構、加えて強大無比な火力までも誇る「ガンダム ヴァーチェ」、そして搭乗者は「ティエリア・アーデ」だ。
 内部に味方が居るというのに輸送艦へとバズーカを向ける「ティエリア」。その攻撃を「ティエレン・タオ・ツー」が邪魔をする。
 「たかが一機でヴァーチェに対抗する気かっ! 調子に・・・乗るなっ!」

-同時刻。ラオホゥ艦内-
 『聞こえる・・・声が・・・』
 脳裏に響く少女の声。意識を失っていた「アレルヤ」は、声の正体に思いをはせる・・・次の瞬間、彼は『変わった』。
 「・・・あぁ・・・あの時の、女の声だぁあっ!」

 機体を開こうとする技術者達を気にもせず、無造作に立ち上がる「キュリオス」。彼「ハレルヤ」は、被害を気にせずに輸送艦を内部から破壊する。次の瞬間、ラオホゥの識別コードはロストした。

 危機に陥る「キュリオス」と「ヴァーチェ」。その作戦は失敗しましたが、「ソレスタルビーイング」もまた無傷というわけにはいきませんでした。
 まずはハードウェア。「ガンダム ヴァーチェ」の(中の人・・・ではなく)中の機体「ガンダム ナドレイ」の露出。
 スリムなスタイルもさることながら、なんと言ってもロング・ヘアーがインパクト大です。(^^;)。
 あの冷静沈着な「ティエリア・アーデ」が、計画を歪めたと後悔するのですから、見た目だけではなく機能的にも隠された力があるのでしょうねぇ。
 そしてソフトウェア。「アレルヤ・ハプティズム」の崩壊(<おい)。
 ガンダムの搭乗者である彼(といっても別人格のハレルヤくん)が、快楽殺人者(?)というのは過激な設定です。
 仮にも土曜夕方6時に放送してよいのか・・・って、考えてみれば「機動戦士ガンダムSEED」や「同 DESTINY」、「鋼の錬金術師」にも、歪んだ人物は多かったですな(まあ、主役級の味方には稀でしょうが)。
 今後のダブル「ハプティズム」に幸多からんことを。

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機動戦士ガンダム00 #09

#09「大国の威信」

 A.D.2307年。ソレスタルビーイングが武力介入を開始してから4ヶ月の時が過ぎようとしていた。
 彼等の介入行動回数は60を越え、人々は好むと好まざるとに関わらず彼等の存在を受け入れていく。
 ソレスタルビーイングを否定する者、肯定する者、どちらの気持ちも戦争を否定するという意味では一致していた。
 誰も、争いを求めたりはしないのだ。
 地球にある三つの国家群のうち、ユニオンとAEUは同盟国領内の紛争事変のみソレスタルビーイングに対して防衛行動を行うと発表。
 しかし、モラリア紛争以来、大規模紛争は一度も行われていない。
 それを可能としたのは、モビルスーツガンダムの卓越した戦闘能力にある。
 世界中で行われている紛争は縮小を続けていたが、武力による抑圧に対する反発は消えることはない。
 そして今、唯一彼等に対決姿勢を示した人類革新連盟である特秘作戦が開始されようとしていた。

 -人革連 高軌道ステーション-
 「特務部隊 超武隊員諸君。諸君らは母国の代表であり、人類革新連盟軍の精鋭である。諸君らの任務は世界中で武力介入を続ける武装組織の壊滅、及びモビルスーツの鹵獲にある。この任務を全うすることで、我ら人類革新連盟は世界をリードし、人類の発展に大きく貢献することになるだろう。諸君らの奮起に期待する」
 彼、「セルゲイ・スミルノフ」中佐の言葉に敬礼をする特務部隊の面々。その中には、超兵1号「ソーマ・ピーリッシュ」少尉の姿もあった。

 -ソレスタルビーイング 戦闘母艦プトレマイオス-
 「・・・デュナメス着艦終了。引き続きエクシアの着艦作業に入ります」
 一方、ソレスタルビーイングの戦闘母艦「プトレマイオス」では「ガンダム」達のオーバーホール作業が始まっていた。
 オーバーテクノロジーの塊とはいえ、メンテナンス作業は欠かせない。
 「スメラギさん、オーバーホール中に、もし敵に襲われたら・・・」
 ガンダムマイスター「アレルヤ・ハプティズム」の質問に、艦のトップとも思えない、だらしない姿で答える「スメラギ・李・ノリエガ」
 「神に祈るわ」
 その言葉に「アレルヤ」は苦笑していた。

 -人革連 高軌道ステーション管制室-
 「これで我が軍の静止衛星軌道領域を80%網羅したことになります。・・・ガンダムが放出する特殊粒子は効果範囲内の通信機器を妨害する特性を有しています。それを逆手に取り、双方向通信を行う数十万もの小型探査装置を放出。通信不能エリアがあれば・・・それはすなわちガンダムが居ると言うこと。中佐、魚は上手く網にかかるでしょうか」
 右腕である「ミン」副官の質問に「そうでないと困る」と返す「セルゲイ」。
 「これほどの物量作戦、そう何度も出来はしない」

-アザディスタン王国 アザディスタン国際空港-
 たかれるフラッシュの群れ。普段は目にしない各国の報道陣達。
 第一王女「マリナ・イスマイール」も、賓客を前に緊張を隠せないでいた。
 『国連大使との会談がまとまれば、この国にも太陽光発電システムが・・・』
 目の前の男性をしっかりと見つめる「マリナ」。彼女の視線を受け止めつつ、その男は儀礼的な挨拶をした。
 「お初にお目にかかります。国連大使のアレハンドロ・コーナーです」
 今、この時期に援助を行う。その真意を掴みかねて、「マリナ」の側近である「シーリン・バフティヤール」は眉間にしわを寄せる。見返りのない援助には裏があることを「マリナ」が気がついていることを願って。
 『あの男、何を考えている・・・?』

 -ソレスタルビーイング 戦闘母艦プトレマイオス-
 「よおっ、何してる?」
 軽口に返されたのは、少女の涙だった。

 「ロックオン・ストラトス」の表情は一瞬固まり、次の瞬間には優しい微笑みを浮かべていた。
 「どうした?」
 プトレマイオス戦況オペレーターのひとり「フェルト・グレイス」は、少しずつ言葉を繋げていった。
 「へぇ~っ、フェルトの両親はソレスタルビーイングに居たのか?
 「ふたりとも、第2世代のガンダムマイスターだって
 現在の「エクシア」達は第3世代のガンダムとなる。
 「俺は君の両親のお陰で、戦えているんだな。そんでもってフェイトはホームシックにでもかかったか?
 彼の言葉に少女は「命日」と答えた。理由も死因も教えてもらってはいないが、ふたりとも数年前の今日、亡くなったと。
 「ソレスタルビーイングのメンバには守秘義務がある。俺も今のメンバの過去を知っちゃいないが・・・。そうか、両親の情報もか。・・・両親の意志を継いだんだな。君は強い、強い女の子だ。・・・ニールド。俺の本名はニール・ディランディ。出身はアイルランド。両親はテロに殺された
 自分だけ「フェルト」の情報を知るのは不公平だからと「ロックオン」は「フェルト」の頭を抱きかかえながら話した。
 「優しいんだね」
 軽く頭を寄せてくる「フェルト」。他者から見れば、今のふたりの姿は恋人同士に見えなくもない。直後に入室してきた「アレルヤ」の慌てぶりを思い出す限り、彼にはそう見えたのだろう。
 「ロックオン・・・し、失礼」
 「ご、誤解をするなっ」
 赤面する「ガンダムマイスター」の表情は、貴重だった。
・・・
 「もう、あんな状態じゃ味なんてわかんないって」
 プトレマイオスの状態監視を一時「リヒテンダール・ツエーリ」に替わって貰い食事に行った「クリスティナ・シエラ」ではあったが、互いに無言で食事をする「刹那・F・セイエイ」と「ティエリア・アーデ」の生み出す空気ではディナーは楽しめるはずもなかった。
 「えっ・・・センサーに反応。これって、通信装置!? ・・・敵にこっちの位置が探知されているっ!」
 監視を替わって貰うのではなかったと、「クリスティナ」は本心から後悔した。

 「人類革新連盟」による対「ソレスタルビーイング」包囲網。
 「セルゲイ・スミルノフ」の作戦に翻弄される「スメラギ・李・ノリエガ」。
 オーバーホール作業中のため全機発進できず、逆にターゲットとして狙われるガンダム。
 非常に続きが気になる・・・ところで「次回へ」です。(^^;)。

 まあ、この話数で「ソレスタルビーイング」が大打撃を受けるとは思えませんが、少数精鋭であればこそ僅かなダメージでさえ命取りと成り得ます。「攻殻機動隊」の「公安9課」と同じ弱点ですね。
 そしてちらっと登場していた「アレハンドロ・コーナー」が、今回、この話数で登場するのにはどんな意味があるのでしょうか。
 「アザディスタン王国」のような小国がゆくゆくは「ソレスタルビーイング」と結託することにより、「ユニオン」、「AEU」、「人類革新連盟」に継ぐようなことも・・・なんて妄想ですね。(^^;)。だいたい「国連大使」としての登場ですから、どんな狙いがあって「アザディスタン王国」に近づいているのかも未知数ですし。
 まあ妄想話はさておき、次回の「ガンダム鹵獲作戦」は楽しみですね。

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