ドルアーガの塔 #10
#10「夏の終わりに」
9.5点(いつの間に黄金の宮突破?)
金剛の宮
絶え間ない豪雪、暴風の前に倒れ行く登頂者達。
「カーヤ殿が居なければ、今頃我々も・・・」
女神イシターの保護を受けた神官「カーヤ」による防寒魔法によって、心はともかく身体は暖まった「ジル」一行は、ひたすら登り続ける。今は、登り続けるしかなかった。
「この宮に入ってからほとんど人を見かけんぞ。我々以外にどれくらい昇ってきているのやら」
「恐らく、数えるほどだろう」
間もなく目的地。邪神「ドルアーガ」が巣くい、秘宝「ブルークリスタルロッド」が眠る地。
その手前にまで辿り着いたのは、下記の登頂者のみ。
・ジル一行
・ニーバ一行
・ウルク国親衛隊
・パズズ一行
いずれも消耗し、その戦力は落ちてきていた。特に「カリー」を失った「ニーバ」一行は・・・。
「もうすぐ最上階よね。ドルアーガなんて倒せると思うの?・・・たった3人で」
「ギルガメス王はひとりで倒した」
戦友を失ったことに対してのあまりにも醒めた「ニーバ」の態度に、いつしか「ファティナ」も喧嘩腰の口調となる。
「確かに大金持ちにはなりたいわ・・・でも、命の方がやっぱり大事。・・・私がここで降りると言ったらどうする?」
「ファティナが居ないと困るな」
まるで質問を予期していたかのように、即答する「ニーバ」。なおも追求しようとする彼女に、彼は唇を重ねた。
「これで信じられるか?」
「こんなの・・・ずるいよ」
「お前が必要なんだ。・・・心配するな、倒せるよ。続きは今度、ゆっくりとな」
パーティの危機を、ある意味力業で回避した「ニーバ」。そんな彼をあざ笑うかのように「サキュバス」が姿を見せる。
「続きは今度ですって?どんな口で言うのかしら。・・・見なさいよあの娘。あなたのキスで蕩けちゃったみたい・・・本当の目的も知らないで、可哀想に。本当にドルアーガ様を倒せると思っているの?」
「本当のドルアーガは80年前に死んでいる。奴はもう・・・神ではない。問題はその先だ。用がないなら消えろ」
「あら、用ならあるわよ。大事なことを教えてあげに来たの・・・夏が終わるわ。もうすぐ」
5年に一度の夏。邪神「ドルアーガ」の魔力が弱まり、登頂者が塔へと登り行く「アヌの夏」がもうすぐ終わると「サキュバス」は語る。
そして彼等は数十メートルはあろうかという氷壁へと辿り着く。武器や盾を持つ手でロープを握りしめ、一歩一歩登り行くしかない絶壁。そんな彼等を下から見上げる「パズズ」の姿があった。
「弱い連中優先であがって欲しいからな。不味いおかずは喰っちまうか」
風魔法を使う「パズズ」に取って、氷壁での戦いは自らの勝利を約束されたようなもの。逃げ切りを計る「ニーバ」にとって不利な戦いが始まる。
一方、同様に氷壁へと辿り着いた「ジル」達は、「カーヤ」の防寒魔法も尽き風雪に晒されながらの登頂を続ける。
せめて楽しい話をしようと「ブルークリスタルロッド」への願いを尋ねる「ジル」に、「メルト」は叶う願いはひとつだけと告げる。金銀財宝なら山分けも出来るが、各人の願いは・・・。
「私の願いは金品で良しとしよう。アーメイ殿はよく知らんが金では無さそうだ。カーヤ殿は不治の病の弟だったか?クーパは・・・まあどうでも良い。お前の誇大妄想もだ。とにかく皆バラバラなのだ。目的の異なる寄せ集めの我々が、これ以上の危険を冒す意味がどこまであるのか・・・任務で個々まで来た軍の連中とは違うのだ。・・・まあ、心配する必要は無いかもしれん。最後に生き残ったものが考えればよいことだ。ふっ、ひとりでも残れば上等だろうがな」
皆が報われると信じてここまで力を尽くしてきた。
その思いが破れ、あらためて思わずにはいられない。自分は果たしてどうしたいのか?
風雪を逃れるため一休みをする「ジル」の頭には、その言葉が浮かんで消えない。
「あなたはどうしたいの?」
兄の隣に「サキュバス」が現れるように、彼の隣には「カイ」が姿を見せる。幻影か、幽霊か、今は話し相手が必要だと「ジル」は独り言のように語り始める。
「僕は、ロッドの力なんていらないんです。ドルアーガを倒せればそれで良い」
「ドルアーガは、あなたに何かをしましたか?・・・ただの英雄願望。あなたは、お父さんの不名誉を自分の剣と盾で晴らしたいだけ。そんな気持ちでは、本当のドルアーガは倒せませんよ。それに英雄になった後も人生は続くんです。幸せになれる保証なんてどこにもないの。ギルもそうだった。・・・でも、よくここまで昇ってきましたね。この娘も、一途なところは彼譲りかしら。・・・私は塔の亡霊。彼をずっと待っている。心から愛するあの人を」
そこまで語ると「カイ」は皆を起こすように「ジル」へと告げる。兄が、「ニーバ」が危機を迎えていると告げて。
空中戦。文字通り空を舞う「パズズ」に対して、器用にロープを支点に戦いを挑む「ニーバ」。
しかし劣勢は明らかであった。このままでは確実に殺される。その姿を見過ごすことは、自分には出来ない。
「ジル」は身を軽くする魔法をかけて欲しいと「カーヤ」に訴えかける。
「危険を冒す前に教えて下さい。あなたはこの先何をしたいのか、ロッドを手に入れたらどうしたいのか、それはお兄さんに託しても良いことなの?・・・お願い答えて」
「そんなのわからないよ、早く魔法をかけて!」
余裕があった。文字通り「ニーバ」の命運は自分の手が握っている。その余裕さから「パズズ」が饒舌になったとしても、彼を責められるものではない。
「しかしわからんな。お前の背後には国王派も宰相派も居ないようだ。なのに何故ロッドの秘密を知っている?後援者は誰だ?・・・スーマール?旧スーマール派だな?今でもバビリム派にたてつくバカどもだ」
「さあね、だが俺も気になる。貴様が運んでいるあの棺の中身は何だ」
「決戦兵器さ。対ドルアーガ?ふん・・・」
流石に喋りすぎたか。とどめを刺そうと手を挙げる「パズズ」。そこへ天から降ってくる「物」があった。いや「者」が・・・。
予告通りの「シリアス回」。流石に説明台詞も多くなってきましたが、1クールですからある程度は仕方がありませんね。
でも長台詞が続く割には、テンポが悪くなったようには感じません。
張り詰める空気というのでしょうか。ミステリーなら犯人当てをする最後のシーン、広間に皆が集められたときのような緊張感が視聴者にも伝わってきます。
限られた人数で、あの志のまま、邪神の影(?)「ドルアーガ」に対する登頂者達。
願いを叶える「ブルークリスタルロッド」ではありませんが、ひとつの思いに集中しないと、倒せる敵とは思えません。
果たして次回、どのような戦いを見せるのか。
「パズズ」の棺の中身は何なのか。
クライマックスへ向けて、盛り上がって参りました。(^_^)。
「ジルさん、さっきの質問の答えをまだ聞いていません」
「質問?・・・なんだっけ」
「・・・いえ、なら良いです」
天空の宮
人の気配が、いやモンスターの気配さえない場所。
誰も宮へと入り、帰り着いた者はいないが、噂に聞いていた場所とは雰囲気が違う。何かがおかしい・・・。
「あと4人ね」
「見ればわかります」
「もうすぐよ・・・ほら・・・」
「ウルク国親衛隊」の「ケルブ」と「エタナ」が「天空の宮」へと足を踏み入れたとき「サキュバス」と「カイ」の前に浮かぶ宝玉が色を全て変え終える。
「慈愛の女神よ」
「冥界の主よ」
彼女たちの声と共に、アヌの夏が終わりを告げた。
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