ドルアーガの塔 #12 最終話
#12 最終話「YOU ZAPPED TO…」
9.8点(俺たちの戦いは・・・)
その姿は、まさに「怪物」だった。
尾の一降りで岩肌を壊し、瓦礫の山へと姿を変える。
咆吼が水面に波紋を作り、生物の神経を冒す。
伝説に謳われる邪神というのも、頷ける話であった。
「ドルアーガの持っている魔法の壁は、消すことが出来る・・・それは間違いないんだよね、カーヤ」
今や、対「ドルアーガ」連合パーティのリーダーとして皆に認識された「ジル」の言葉に、巫女「カーヤ」は頷く。
「はい。ただし、一度だけです」
誇張ではなく、一度きりのチャンス。その一度で倒さなければ、「ドルアーガの塔」に住む全ての人間が死を迎える。
しかし、「ドルアーガ」は巨大で、かつ動きも素早かった。
「だから、地形を利用しよう。僕たちはさっき、上の階を見てきたんだ」
最上階。ブルークリスタルロッドが隠されているという頂上部は、その場所に相応しくクリスタルの森となっていた。
数メートルのクリスタルが、縦横無尽に突きだし、天上を見上げることさえ出来ない。そこに奴をおびき寄せる。
「あそこならドルアーガも、むやみやたらに手足を振り回せない」
そして、肝心の「ドルアーガ」をおびき寄せる役目は「ジル」が行うという。
「頑丈さも、ちょっと自信があるしね」
彼の言葉に、いや、その決意の表れに・・・誰もが認めざるを得なかった。
「無くしちゃ、ダメでしょ」
最後の「虚無の矢」を「ニーバ」へと手渡す「サキュバス」。彼はそれをひったくるように掴むと、微笑みを浮かべる「サキュバス」を見据える。
「嬉しいのか、ドルアーガの強さが。・・・そうさ、何しろ昔のお前の男だからな」
微笑みを消した「サキュバス」は、足音を響かせる昔の男の方を見つめた。
「彼はもう死んだわ・・・ギルガメスと戦って」
「そしてお前は・・・この塔の奥深くに封印されていた」
ふたりの関係はそこから始まった。封印を解いた男を助け、塔の頂点へと誘うべし。その役目を彼女は果たそうとする。
「もう勝てそうにないと思うの?・・・大丈夫。あの子達が頑張るから、あなたは横で見ているだけ。・・・幻の塔を見たくないの? 本当の旅は、これからなのに・・・」
「諸君にひと言、謝っておきたい。これまで私は登頂者を軽蔑していた。ケチなこそ泥家業の連中だと。・・・だが、間違いだった。これからの戦いがどうなろうと、諸君の勇気だけは称えさせて欲しい」
正規の軍人として、「ウルク国親衛隊」の隊長として「ケルブ」の言葉に登頂者達との結束は深まった。
最後の戦いに向けて、配置を済ませる登頂者達。「ジル」もその場を離れ、残った登頂者達も移動を始める。
「これが最後になるかもしれないので・・・言わせて下さいませ」
「うん?・・・なんだ、いきなり」
決意を秘めた「クーパ」の瞳に、気圧されるように無言になる「メルト」。
「旦那様にお仕えして、気苦労ばかりの毎日でございました。・・・貧乏だし、見栄っ張りだし、我が儘だし、ひ弱だし・・・旦那様は、本当にどうしようもない穀潰しでございます」
「それが言いたいことかっ」
事実ではあったが、「クーパ」の物言いについ反論したくなる「メルト」。しかし、少女が顔を上げると、その口は再び閉ざされる。
「でも、来世でもお仕えするつもりでございます。・・・このクーパめがいないと、旦那様は何も出来ないダメ男でございますから」
「お前・・・」
「さあ、参りましょう! アーメイ様の、敵討ちでございますっ!」
「敵討ち・・・ああ、そうだな」
またふたり、覚悟を決めた登頂者が生まれた。
「これで、魔法の負担が減るの?」
「ええ、威力もちょっとだけあがります」
ここまでほとんど会話をしてこなかった「ファティナ」と「カーヤ」。離れようとする「カーヤ」に、「ファティナ」が言葉を続ける。
「ジルのことだけど・・・あなた、あいつと付き合っているの?」
「それは・・・別にそういう関係というわけでは」
「ふーん、まあどっちにしても思わせぶりな態度はやめておいた方が良いんじゃないの? 私、隠し事の多い女って嫌いなの。・・・たぶん、良い子なんでしょうね、あなた。でも好きになれない・・・ごめんね」
良い機会だから。それとも気になっていたから? でも、なんでこんなことを・・・。
「本当・・・どうして好きになれないんだろう」
それは、勘・・・みたいなものだった。
「あのさあ、カーヤ。・・・今までありがとう」
盾、そして鎧へと防御魔法をかける「カーヤ」の、手が止まった。
「えっ・・・」
真っ直ぐな「ジル」の瞳が「カーヤ」を見つめ、彼女は身をすくませる。まるで、後ろめたいことが・・・あるように。
「もしかしたら僕・・・これから死んじゃうかもしれないけれど、あまり、気にしないでね。だって、こんな僕がここまで来て、凄い仲間と一緒に戦って・・・夢みたいな話だよね。そう、本当・・・こんな夢を見たことがあるんだ。君と出会う前に・・・」
ダメ・・・もう耐えられない。ゆっくりと、「ジル」に気取られないように「カーヤ」は目をそらし言葉を返す。
「もし、この先が片道切符だったとして・・・もう二度と戻れないとして・・・やっぱり・・・無理・・・」
紡ぐ言葉の代わりに、彼女は立ち上がると「ジル」を抱きしめる。
それは、彼の瞳に映ることが耐えられないから。
「ごめんなさい。私・・・あなたに謝らなければならないことが・・・たくさんあるんです・・・でも・・・ジルはいい人だから・・・凄く好きな人だから・・・もう、これ以上・・・」
それは、彼の言葉を聞くことが耐えられないから。
「カーヤ?」
ゆっくりと男の唇に押し当てていく「カーヤ」。隙間ひとつ無くすように、言葉が漏れ出してこないように。それは、口づけという形を借りた・・・
「・・・死なないで下さい。約束して。・・・それじゃあ」
笑みを浮かべることもできず、哀しみも見せず、何か押し黙るようにその場を離れる「カーヤ」。
かける言葉もなく、「ジル」はその場に立ち尽くした。
そんなふたりの姿を遠目に見ていた「ケルブ」と「エタナ」。彼女もまた決意という言葉の勇気を奮い立たせる。
「ケルブ様・・・私もハグして良いですか?」
「いいぞ」
肩へと手が伸び、抱きしめられる・・・かと思えた「ケルブ」の右手は、そのまま彼女を前方へと突き飛ばした。
「・・・さっさとやって来い!」
「え、いいえジルとではなく・・・って、素でぼけているんですかあぁっ!?」
彼女の決意は、幻へと姿を変えた。
「ん・・・静かすぎる。先ほどまでは・・・」
特に会話を変えようという意図もなく「ケルブ」が口走る。そう、ここは本来戦場であった。にもかかわらず怪物の足音が止んでいる・・・次の瞬間、壁が破壊された。
「くっ・・・走れ、いいから走れっ! 引きつけるからっ!!」
最後の別離を待っていたかのように、怪物は姿を現した。通路は障害物の役割すら果たさないかのように、直線的に襲いかかってくる「ドルアーガ」。山をも砕く一撃が、「ジル」へと伸びた。
「冗談みたいだよな。あんな風に笑われていた僕が、今こうして、お前と戦っているなんて・・・来てみろよでっかいの。ただし僕を殺すことは・・・ちょっと難しいぞっ!」
神への戦いが、今、始まった・・・。
最終話ということで、「GyaO」にて監督「千明孝一」、シリーズ構成「賀東招二」、スーパーバイザー「遠藤雅伸」他とチャットをしながら楽しく鑑賞しました。もう完全ネタバレと言うことで、3つの裏切りはこちら。
1つめの裏切り:偽物のブルークリスタルロッド
2つめの裏切り:ニーバに背後から撃たれる
3つめの裏切り:カーヤはニーバを選択する
え、最終話の展開は「視聴者への裏切り」ではないかって?
いやいや、あくまで「ジル」に対する裏切りですから、最終話の展開は関係ありません。
それに、最終話の展開は、私、結構好きです。
前々回あたりから、伏線の回収は難しいと感じていたので、無理矢理まとめるのかと危惧していました。それが、「邪神ドルアーガ」との戦闘、「ジル」やパーティ一行の成長に絞って描かれた濃い内容で大満足(もちろん、第二期制作決定が前提の満足です)。
ここは、楽しみなアニメがひとつできたと、大きな心で見守っていこうではありませんか。
ちなみに、第二期では主人公は変わらず「ジル」とのこと。
新たなパーティに「ファティナ」は確定。「メルト」、「クーパ」も可能性大。恐らく「ウトゥ」も加わることでしょう。回復系は居ませんが、なかなか攻撃的で楽しそうなパーティです。
それでは、2009年の第二期で再びお会いしましょう(こちらは確定)。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント